「子供の便に血が混じっている・・・。」
となると、びっくりしてしまいますよね。
血液の混じった便を血便(けつべん)と言います。
血便は、口から肛門までの消化管で起きた出血によって起こります。
どんな血便か、また他の症状はあるかをよく見ることでその原因が何であるか考えます。
今回は、子供が血便をしたときに考えられる6つの原因を見てみましょう。
子供の血便の原因とは?
子供の血便の原因として以下の6つの疾患が挙げられます。
- 裂肛(れっこう)
- ポリープ
- 腸重積(ちょうじゅうせき)
- 潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)
- クローン病
- メッケル憩室
裂肛
裂肛はいわゆる「切れ痔」。
子供の血便の多くがこの切れ痔によるものです。
肛門近くから出血をすると赤い血の色の血便となるので裂肛の場合は鮮やかな血の色をした血便になります。
排便の後にぽたっと出血したり、ティッシュに血がつく場合も。他の症状はみられませんが、便秘で排便が困難なために起きてしまうことも少なくありません。
裂門が起きると肛門に違和感があったり排便時に痛んだりします。治りかけにはかゆみを訴える子供もいます。
傷の炎症を鎮める軟膏を塗ったり、便秘解消をすることで治っていきます。
ポリープ
ポリープとは消化管の粘膜にできた突起状のものを言います。
大腸ポリープは大腸にポリープができる病気です。少量ですが便に血が混じることがあります。
若年性ポリープは直径が1センチほど、表面が平滑な球状のポリープです。
直腸やS状結腸によくでき、子供に多くみられるという特徴があります。
原因は便の刺激によるものと考えられています。
若年性ポリープの場合、便に赤い血が付着した血便となります。ポリープというと癌化するイメージでぞっとしてしまう方も多いのではないでしょうか?
実際、ポリープは癌になるものとならないものがあるのですが、子供のポリープは大人と違い、悪性化はしません1)。
腸重積
腸重積は腸に腸が入り込んでしまう疾患で、主に5歳くらいまでの乳幼児にみられます。入り込んだ腸は血行障害で出血し、腸の動きにあわせて周期的に激しい腹痛を起こし、イチゴジャムのような粘液血便をします。
また嘔吐も主な症状の一つです。
超音波検査(エコー検査)で診断されることが多いです。
腸が壊死、または壊死しかけている場合は緊急手術となりますが、血便に気づいてすぐ受診すれば造影剤や空気を注入して入り込んだ腸を押し戻すことで治療が可能です。
元気だったお子さんが突然の腹痛に泣き出したり機嫌をわるくしたりして、嘔吐や粘血便を伴うことがあれば腸重積を疑います。
早くに受診をして重篤化を防ぎましょう。
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潰瘍性大腸炎
大腸にびらんや潰瘍ができる病気です。病変は直腸から口方向へ連続的に見られ、若い人に多くみられるという特徴があります。主な症状は下痢。
下痢は下血を伴うことがあり、イチゴジャムのような粘血便がみられることもあります。
腹痛が起こることもあり、重度のものでは発熱や体重の減少、貧血症状が見られます。
合併症として皮膚、関節、眼に症状が現れることもあります。通常は内科治療が可能ですが穿孔が起きた場合などは外科手術を要します。
再発することが多いので継続的な内科治療を行うと良いでしょう。
クローン病
消化管に非連続性の炎症や潰瘍を慢性的に引き起こす炎症性腸疾患の一つです。病変の部位によっても症状は様々ですが、半数以上に腹痛や下痢などが見られ、病変から出血すると血便となります。
通常は黒いタールのような血便ですが出血量が多いと鮮紅色の便になります。発熱や貧血が見られることもあります。
原因ははっきりと判明しておらず、10代から20代に多いという特徴があります。
治療は栄養療法や薬物療法などの内科治療ですが、腸閉塞や穿孔などの合併症がみられたら外科治療を行います。
メッケル憩室
メッケル憩室は小腸の中間にみられる袋状の突起物です。
胎児のときに発生し、そして消滅する卵黄のう管が残ってしまったものがメッケル憩室となります。メッケル憩室には胃粘膜が存在することがあり胃と同じように胃酸を分泌するので、潰瘍や炎症を起こし下血を引き起こす原因となるのです。
出血の量が多ければ鮮紅色の便になりますが、血液が分解された場合は黒くなったりタール便になったりします。
メッケル憩室の疑いがもたれたら核医学検査であるシンチグラフィで胃粘膜の存在を確認することで、診断を確定します。
症状が伴う場合は憩室や腸管の切除手術を行います。
最後に
子供が血便をしたときに考えられる原因についてお伝えしました。
口から食べ物を入れて肛門から便として排泄される過程の中で、出血が起こると血便になります。子供が血便を訴えたとき他に症状を伴わないものは放置してしまいがちです。
しかし、血便を起こす原因の病気が腸重積、腸閉塞、穿孔の合併症を引き起こすものが多いということがお解りいただけたと思います。
子供に自分で様子をみるように言ったとしても、まだ自己管理が不十分な子供は、どの状態が異常であるのか判断できず重症化するまで気づかないということも考えられます。一度血便を訴えたらその後の様子はしっかりと観察しましょう。
そして慢性化しているようであれば一度診察することをおすすめします。激しい痛みなどを伴い緊急を要するものもありますので、その場合にはただちに受診をしましょう。
子供の病気は自分の体の症状と違い把握するのが難しいものです。
よく観察して大きな病気のサインを見逃さないようにしましょう。
参考サイト)
1)日本小児外科学会 腸管ポリープ