黒い嘔吐物が出た。
目の当りにしたら恐怖さえ感じてしまいます。
「これって何かの病気!?」
嘔吐だけでも体の不調のサインなのに、それが黒いなんて。
ガンなどの深刻な病気ではないかと脳裏をよぎったことと思いますが、黒い嘔吐を引き起こす病気はいくつかあります。
黒い嘔吐物の正体は何なのでしょう?
どんな時に黒い嘔吐物が出てしまうのでしょう?
今回は黒い嘔吐物の原因についてお伝えしたいと思います。
黒い嘔吐物の正体は?
嘔吐物が黒く見えるのは血液が混じっている状態であるからです。
そしてその血液は、上部消化管の出血によるものです。
上部消化管とは主に食道、胃、十二指腸のことです。
上部消化管の出血に嘔吐が伴い吐血した際に黒い嘔吐物が見られるわけです。
血はどちらかというと赤色ですよね。
黒くなるのは、胃酸によって変化するからです。
胃酸にさらされる時間が長くなるほど、黒っぽくなります。
その色合いから、「コーヒー残渣様(ざんさよう)」と呼ばれます。
消化管の出血は多量であることはまれですが、体の表面からと違い圧迫して止血などができませんし、深いところから少量ずつ出血していると自覚症状がなく、慢性化すると鉄欠乏性貧血を起こすリスクがでてきます。
出血が大量の場合は赤い吐血となり緊急で内視鏡や手術の必要がありますが、黒い嘔吐物の場合、それほど緊急性がなくても出血に気づいた時にしっかりと医師の診察を受けるようにしましょう。
黒い嘔吐物を起こす病気
黒い嘔吐物の原因として考えられる病気は
- 胃潰瘍(いかいよう)
- 十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)
- 逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)
- 食道がん
- 胃がん
- マロリー・ワイス症候群
- 食道・胃静脈瘤(しょくどう・いじょうみゃくりゅう)
などです。
胃潰瘍
胃潰瘍(いかいよう)とは胃に炎症が起きる疾患です。
炎症が粘膜層のみの場合は「びらん」と言い、粘膜下層より深く炎症が起きている状態を「潰瘍」と言います。
胃潰瘍の主な症状はみぞおちの痛み。
痛みは胃潰瘍の進行に比例するものでなく個人差があります。
潰瘍から出血すると、胃酸で黒くなった血液を吐血することで黒い嘔吐物となります。
消化物と一緒にコーヒーのかすのようなものが嘔吐物にみられることもあるでしょう。
冷や汗や動悸、血圧低下、出血した潰瘍部分に激痛が伴うこともあります。
なお、胃潰瘍を含み、急激な上腹部痛として発症する胃粘膜病変を急性胃粘膜病変(AGML)といい、こちらも吐血し黒い嘔吐物の原因となります。
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍も胃潰瘍と同じように粘膜より深く炎症が進行した疾患です。
潰瘍から出血すると吐血し、貧血などの症状を引き起こします。
十二指腸潰瘍の場合は便から血液が出る下血も多く見られますが、口からでる吐血も起こします。
十二指腸の場合、がんに移行することはまれでほとんどが良性腫瘍と言われています。
しかし、そのままにしておくことは症状の悪化や貧血などの心配があるため望ましくありません。
しっかりと受診して治療に取り組みましょう。
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逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃酸が食道へ逆流し食道の粘膜にびらんや炎症を起こす病気です。
これにより粘膜から出血し、嘔吐を伴った場合、吐血することにより黒い嘔吐物となります。
食道は口から入った消化物を胃に送る働きがあり、食道そのものは消化することができません。
胃酸などの刺激に対しても抵抗力が強いとは言えないのです。
そのため、通常は胃からの逆流を防ぐため胃と食道の間には下部食道括約筋という筋肉が締まっていて食事の時に緩む仕組みになっています。
しかし、筋肉が緩んだ状態では胃酸が逆流しやすくそれが食道の炎症につながります。
筋肉がゆるむのにはいくつかの原因が考えられます。
一つは胃が膨らんだ状態になること。
胃が膨らむと一時的に筋肉が緩みますが、これは体の自然な働きです。
食事をした後などゲップが出ることがありますが、それも胃が膨らんで筋肉がゆるんだことで起こります。
他には、肥満による腹圧の上昇や食道裂孔ヘルニアなどです。
逆流性食道炎は珍しい病気ではなく、自覚症状がないため、検査で初めて気づくことも少なくありません。
重症化したときに現れる症状、または自覚できる症状は、胸の痛み、喉の違和感、口の中が苦く感じるなどがあり、胃酸が気管や耳を刺激して喘息や耳鳴りの原因になることもあります。
さらに進行した例では、炎症を繰り返すことによって食道の内腔がせまくなり、食事が通りにくくなります。
そのままにしておくと、食道がんへ進行する原因にもなるので早めに治療をすることが望ましいでしょう。
食道がんの初期症状も逆流性食道炎の重症化した時と同じようなものです。
初期症状は頻繁には現れず生活にさほど支障がなく、しばらくすると消えることがあるため見過ごしがちです。
吐血や違和感があった時はしっかり受診をしましょう。
食道がん
食道がんとは食道に悪性腫瘍ができる病気です。
初期は無症状や、飲み込んだときに「わずかにしみる」感じといった症状の軽いものです。
がんが進行するにつれ、飲み込みにくさ(嚥下障害)、体重減少といった症状が出てきます。
がんから出血を起こすと嘔吐した際に、胃から逆流して黒い嘔吐物となることがあります。
胃がん
胃がんとは胃に悪性腫瘍ができる病気です。
自覚症状は胃の不快感やゲップ、食欲不振など、日常的にみられてもさほど支障がなく見逃してしまうことが少なくありません。
進行してくると、ひどい食欲不振や衰弱、お腹が張る、吐血するなどのはっきりした症状が現れます。
胃潰瘍と同じように、コーヒーのかす(残渣)のような黒い嘔吐を起こすことがあります。
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マロリー・ワイス症候群
過度のアルコール摂取などが原因となり、激しい嘔吐や吐き気により腹圧が上昇します。
腹圧が上昇することで食道と胃の境界部である食道胃接合部の粘膜が裂けてしまい、出血し、それを嘔吐することで吐血を起こすことがあります。
これをマロリー・ワイス症候群と言います。
吐き気などが強い場合は原因となり得ますので、アルコール摂取の他に、妊娠悪阻や内視鏡検査なども原因となります。
食道・胃静脈瘤
肝硬変などで門脈の圧力が高くなる(門脈圧亢進が起こる)と、側副血行路として食道静脈瘤や胃静脈瘤ができることがあります。
これらが胃酸により破裂をするとときに大出血を起こし、突然の吐血やショックの原因となります。
最後に
嘔吐物が黒い時の原因についてお伝えしました。
黒いものの正体は胃酸によって変化した「血液」です。
口から出る、つまり吐血する場合には上部消化管からの出血が疑われます。
頻度としては潰瘍であることが多いです。
出血量が多い場合は鮮やかな血を吐血し緊急に受診する要があります。
しかし、ご覧いただいたように黒い嘔吐物となって現れた吐血も放置することは危険です。
不安はさらに嘔吐を促し悪化させる心配もありますし、悪性のものの可能性もあります。
嘔吐物が黒い場合は、なるべく早く受診をして治療を進めましょう。
なお受診するべき科は、
- 消化器内科
- 胃腸科
となります。
参考になれば幸いです<(_ _)>