発展途上国を旅行すると、下痢を起こして帰るということをよく聞きますよね。
この原因のひとつに赤痢があります。
昔はある程度の患者数がいたものの、1980年以降の日本では、年間1,000例前後に減少しています1)。
今回は、この赤痢菌に感染した場合の
- 症状
- 原因
- 潜伏期間
- 検査
- 治療
- 排菌までの期間
についてまとめました。
赤痢菌に感染した場合の症状は?
嘔吐や吐き気などはあまりなく、
- 全身の倦怠感
- 発熱(悪寒を伴う)
- 水様性下痢
- 腹痛
などが認められ、熱は38度程度が多いものの、中には39〜40度の高熱となることもあります2)。
また、便に粘液や血液が混じることもしばしばあります。
赤痢菌の原因(感染経路)は?
汚染された食品や水で感染しますが(経口感染)、推定感染地はインドなどアジア地域が多く、その中でも症例の80%は小児(世界的に見て)なものの、日本では青壮年層が70〜80%を占めています3)。
この赤痢菌は、通性嫌気性グラム陰性桿菌(腸内細菌科)で、 A群・B群・C群・D群の4菌種に分類されます。
発見者は、日本人研究者の志賀潔で、1898年に発見されたことにより、Shigellaという属名がつけられています。
赤痢菌の潜伏期間は?
潜伏期間は、1〜5日です4)。
軽度の水様性下痢から始まることが多いため、発展途上国を旅行し帰宅した後に感染が発覚することも多くあります。
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赤痢菌と診断されるにはどんな検査が必要?
糞便の細菌検査を行い、確定診断をします。
しかし、臨床症状のみでは診断できず、
- 海外渡航歴
- 家族や同一施設内での集団感染
- 推定原因食品
- ペットの飼育(猿が多い)
などの情報が非常に重要です。
そして、これらから赤痢菌が予測される場合は、検査をする側も汚染対策を十分に行いつつ実施する必要があります。
赤痢菌に感染した場合の治療法は?
- 対処療法(輸液療法)
- 抗菌薬投与
などが必要になります。
- ニューキロン系抗菌薬
- ホスホマイシン
が第一選択となります。
赤痢菌に感染した場合、排菌までの期間は?
適切な治療を実施できた場合、2・3日以内に排菌は止まります。
発症から約4週間とされていますが、抗菌薬の投与が不十分な場合、再排菌の可能性もあります。
5日間は、確実に抗菌薬を投与することが必要です。
そして、抗菌薬の投与が終わり48時間以降、24時間以上の間隔をあけ、2回続けて排菌が確認(赤痢菌陰性)できると完治したと証明されます5)。
参考文献:
1)2)3)5)感染性腸炎 AtoZ 第2版 P82〜85
4)消化器疾患ビジュアルブック P92
最後に
- 全身の倦怠感・発熱・水様性下痢・腹痛などの症状がある
- 汚染された食品や水で感染する
- 潜伏期間は1〜5日
- 糞便の細菌検査で確定診断されるが、問診が非常に重要
- 対処療法(輸液療法)・抗菌薬投与などを行い治療する
- 適切な治療を実施できた場合、2・3日以内に排菌は止まる
- 抗菌薬の投与が不十分な場合、再排菌の可能性もある
感染拡大を予防するためにも、海外から帰宅途中の飛行機内で異常を感じた場合は、空港にて自ら申告することが必要です。