ニュースで、「O-157による死亡者が出た。」
と聞くと、生レバーが禁止されるきっかけとなった事件を思い出される方、多いのではないでしょうか?
当時、5人の方が命を落とし、24人の方が重症となったため、焼肉店で起こったユッケ集団食中毒事件として多くのメディアで取り上げられましたよね。
その、O-157というのが、腸管出血性大腸菌(ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきん「Enterohemorrhagic E. coli」)による感染症です。
では、この腸管出血性大腸菌とはどういうもので、どういう症状が出るのか?
- 症状
- 原因
- 潜伏期間
- 検査
- 治療
までをまとめました。
参考にされてください。
腸管出血性大腸菌とは?症状は?
腸管出血性大腸菌は、VT産生能を持つ下痢性大腸菌と定義されています。
ん?
ちょっと難しいですね。
この腸管出血性大腸菌は、血清型があり
- O-157(72.6%)
- O26(19.0%)
- O111(3.5%)
があり1)、腸管出血性大腸菌=O-157と覚えていただくとわかりやすいかもしれません(他にも数多くの血清型があります)。
- 下痢
- 血便
- 腹痛
- 悪心
- 嘔吐
- 溶血性尿毒症症候群
などです。
発熱もあるものの微熱程度で、38度以上の高熱となるのは稀です。
また、中には下痢や血便が見られない例もあります。
腸管出血性大腸菌の原因は?
- 動物肉製品
- 未滅菌乳
- 野菜
- 魚介類
など、汚染された食品により経口感染しますが、
- プール
- 湖
- 井戸水
など、水系感染もあります。
そして、感染者と身近に過ごしている家庭内や保育園などの集団施設において、人から人への二次感染も多いのが特徴です。
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腸管出血性大腸菌の潜伏期間は?
2〜8日の潜伏期間を経て発症します。
とくに多いのは、3〜5日です2)。
腸管出血性大腸菌の検査は?
- 便検査
- 画像検査(内視鏡検査)
などで検査しますが、糞便から菌を特定するのが一般的です。
検査の結果O-157が出た場合、かかりつけの病院から近隣の医療機関などに報告する義務があり、保健所の管轄となります3)。
保健所から職員の方が3人訪問し、2週間前までの食事内容を書き出し原因を探り、家族全員便検査を行いました。
結果、原因はわからなかったものの、大人である父親が感染し、症状が出ないまま何らかのタイミングで子供に感染。
まだ小さかった子供には強く症状が出現、その後母親である私にも感染が確認されたものの、症状は出ませんでした。
感染者の約1/3は無症状、または軽症で済むのです4)。
腸管出血性大腸菌の治療は?
治療には抗菌薬の経口投与が一般的です。
大人の場合に用いられる抗菌薬
- ニューキロン系抗菌薬
- ホスホマイシン
子供の場合に用いられる抗菌薬
- ホスホマイシン
- ノルフロキサシン
- カナマイシン
鎮痛目的での鎮痙剤・腸管運動抑制性の止痢剤は禁忌です。
参考文献:
1)2)4)感染性腸炎 AtoZ 第2版 P34〜37
消化器疾患ビジュアルブック P92
参考サイト:
3)腸管出血性大腸菌Q&A 厚生労働省
最後に
腸管出血性大腸菌について、ポイントをまとめます。
- 腸管出血性大腸菌は、VT産生能をもつ下痢性大腸菌
- 下痢・血便・腹痛・悪心・嘔吐・溶血性尿毒症症候群などの症状が出るが、無症状や軽症例も多い
- 汚染された食品による経口感染や、水系感染、人から人への二次感染もある
- 2〜8日の潜伏期間を経て発症する
- 糞便から菌を特定する
- 抗菌薬の経口投与が一般的
家庭内で感染予防のためには、しっかりした手洗いや除菌(薄めたキッチンハイターなどで)が重要です。
下痢や嘔吐物の処理の際などにも、十分な注意をしましょう。