今回は、腸炎ビブリオ(英語表記で「Vibrio parahaemolyticus」)について
- 症状
- 原因
- 潜伏期間
- 検査
- 治療
などをまとめましたので、解説していきます。
腸炎ビブリオに感染した場合の症状は?
腸炎ビブリオの症状には、
- 水様性下痢
- 悪心
- 嘔吐
- 腹痛(上腹部)
- 発熱(微熱)
などがあります1)。
しかし、中には便の中に粘液や血液が混入したものが見られることもあります。
大半は固まりのない水のような下痢で、その便は腐敗臭がします。
また、稀ではあるものの、敗血症を起こすこともあるため、注意が必要です。
腸炎ビブリオの原因(感染経路)は?
腸炎ビブリオは、好塩性の海洋細菌で、魚介類に含まれます2)。
寿司などの生魚を食した際に感染する例が多く見られますが、食塩を含む培地で発育する菌なため、海産魚介類で感染するのでとくに夏場は注意が必要です。
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腸炎ビブリオに感染して発症するまでの潜伏期間はどれくらい?
原因となるものを食し、4〜28時間以内と短い間(潜伏期間)で発症します3)。
腸炎ビブリオと診断されるにはどんな検査が必要?
まずは、原因を探ることが大切ですが、夏場に魚介類を食べた後に出た食中毒ならば、腸炎ビブリオが疑われます。
- 便培養
- 内視鏡検査(腸液培養・細菌培養)
にて、原因菌を特定することができます。
とくに排出した便から簡単に行える検査である便培養では、便中に多くの菌が排出されるため、診断に有用です。
また内視鏡検査では、
- 回盲弁の腫大・発赤・びらん
- 終末回腸の発赤・びらん
- S状結腸や下行結腸に、浮腫・発赤
などを認めることがあります。
腸炎ビブリオに感染したら、どんな治療をするの?
下痢や嘔吐が激しい場合、脱水症状に注意が必要で、輸液療法(点滴)を必要とすることもあります。
しかし、ロタウイルスなどが症状回復後もしばらくウイルスが排出され続けるのに対し4)、腸炎ビブリオの場合は3日以内に80%は排菌しなくなります5)。
そのため、必ずしも抗菌薬を必要としませんが、重症例(症状が強い)では
- ナリジキシン酸
- トラサイクリン系
の抗菌薬が使われます6)。
参考文献:
1)消化器疾患ビジュアルブック P92
2)3)5)感染性腸炎 AtoZ 第2版 P60〜63
4)ノロウイルス現場対策 その感染症と食中毒 P40
最後に
腸炎ビブリオに感染した場合について、ポイントをまとめます。
- 水様性下痢・悪心・嘔吐・腹痛(上腹部)・発熱(微熱)などの症状が見られる
- 腸炎ビブリオは、好塩性の海洋細菌で、海産魚介類に含まれる
- 潜伏期間は、4〜28時間以内
- 便培養・内視鏡検査(腸液培養・細菌培養)などを行い、原因菌を特定
- 脱水症状に注意が必要
- 重症例では、抗菌薬の投与が行われる
たかが食中毒といっても、重症化して敗血症を起こすと(頻度は低い)死亡に至ることも中にはあるのです。
そのため、症状がひどい場合には、医療機関にて適切な治療を受けましょう。