エルシニア腸炎という食中毒をご存知ですか?

エルシニア?

聞き慣れないものですが、日本にはあまりいない菌なのかしら?

いいえ、過去に日本でも集団食中毒を起こした事例が何度もあります。

え〜。

どんな症状が出て、どこから感染するのかしら?

 

今回は、エルシニア腸炎を引き起こす食中毒、エルシニア感染症について

  • 症状
  • 原因(感染経路)
  • 潜伏期間
  • 検査
  • 治療

などを解説したいと思います。

エルシニア腸炎の症状とは?

どんな症状が出るとエルシニア腸炎を疑うのでしょう?
実はこのエルシニア腸炎、症状が多彩なんです。

エルシニア腸炎の症状は、

  • 胃腸炎型
  • 回盲部炎症型(終末回腸炎型・腸管膜リンパ節炎型・虫垂炎型)
  • 結節性紅斑型
  • 関節炎型
  • 敗血症型

などの病型があります1)

また、出現する症状は患者の年齢によっても異なるので、乳幼児・幼小児・それ以上と分けて説明しますね。

乳幼児に現れる症状

下痢や嘔吐といった、腹部症状が主体です。

しかし、乳幼児の感染は多く、これ以外にも多彩な症状がみられることもあります(多彩な症状はのちほど記します)。

幼小児に現れる症状

  • 終末回腸炎
  • 虫垂炎
  • 腸間膜リンパ節炎

などが多く見られます。

それ以上に現れる症状

全身症状(関節炎など)を伴うようになります。

 

具体的には、どんな症状が現れるのでしょう?
多彩と言われる、その症状を挙げてみますね。
  • 腹痛(右下腹部痛が多い)
  • 発熱(高熱は少ない)
  • 頭痛
  • 咽頭痛
  • 発疹
  • 紅斑
  • 苺舌
  • 下痢(血性下痢はまれ)
  • 嘔吐
  • 口唇の潮紅
  • 四肢指端の落宵
  • 結膜充血
  • 頸部リンパ節腫大
  • 肝機能異常
  • 肝脾腫

などです。

エルシニア腸炎の原因は?

  • Y.enterolitica
  • Y.pseudotuberculosis

が原因菌となります。

あまりピンときませんが、何から感染するのでしょう?
以下のような原因食品があります。
  • 豚肉
  • ネズミ
  • 鳥類
  • 魚介類

など、菌を持った獣から直接、または飲食物を介して経口感染します。

しかし、人から人への感染はまれです。

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エルシニア菌の潜伏期間は?

潜伏期間は、1〜10日です2)

エルシニア腸炎の検査は?

  • 便検査(菌の検出)
  • 生検(組織培養)
  • 血液検査(血清培養)
  • 画像検査(内視鏡検査)

などがありますが、糞便から菌の検出をするとで診断できます。

また、内視鏡検査では、回盲部に病変が見られることが多くあります。

多彩な症状を示すということでしたが、鑑別すべき疾患などあるのでしょうか?
好発部位の一致する、以下の疾患との鑑別が重要です。

鑑別すべき疾患

  • 腸チフス
  • パラチフス
  • Crohn病
  • 悪性リンパ腫

などです。

エルシニア腸炎の治療は?

抗菌薬を使用することが多くありますが、治療に抗菌薬を使用しなくても予後は良好です。

しかし、重篤な症状や合併症を示す場合には、抗菌薬を使用が有用とされています。

どんな抗菌薬が使われるのでしょう?
重篤な症状が合併症がある場合は、以下の抗菌薬の使用が推奨されています。
  • アミノグリコシド系抗菌薬
  • ドキシサイクリン
  • フルオロキノロン系抗菌薬
  • ST合剤

など。

参考文献:
1)2)感染性腸炎 AtoZ 第2版 P50〜59
消化器疾患ビジュアルブック P92・93
参考サイト:
DIID 国立感染研究所

最後に

エルシニア感染症について、ポイントをまとめます。

  • エルシニア腸炎は、多彩な症状を示し、年代によっても異なる
  • 胃腸炎型・回盲部炎症型・結節性紅斑型・関節炎型・敗血症型などの病型がある
  • Y.enteroliticaやY.pseudotuberculosisが原因菌
  • 菌を持った獣から直接、または飲食物を介して経口感染
  • 潜伏期間は、1〜10日
  • 糞便から菌の検出をすることで診断できる
  • 重篤な症状や合併症を示す場合には、抗菌薬を使用が有用

菌の検出が確定診断には重要ですが、便培養で診断できないこともあり、その場合には生検培養が有用となります。